質問

明治時代における横浜港の密輸の統計があれば見たい。

回答

以下の資料から明治32(1899)年の関税法施行前と後で、犯則の取扱いが違うことがわかりました。

『横浜税関百二十年史』 横浜税関百二十年史編纂委員会/編 横浜税関 1981.11
p.85~93 開港当時の税関(運上所)業務について記載があります。
  「開港に先立って安政六年三月「開港場所、外国船々取扱向、並貿易御取締筋諸事御取扱方御仕法(貿易御仕法筋)」を制定し」ましたが、
「各港における取扱いは必ずしもこの「貿易御仕法筋」どおりにはいかなかったようであり、細部の取扱いについては
各開港場ごとに各港駐在領事と協議して処理されたとみられる。」とあります。
 横浜税関(運上所)の事務取扱、犯則の種類別の調査・処分の手続きについて記載があります。

『税関百年史 上巻』大蔵省関税局/編 日本関税協会 1972
 p.179~180 「犯則事件の調査および処分」
  「犯則事件の調査および処分に関する手続きが、はじめて明確に規定されたのは、
 (明治)32年の関税法施行以後のことである。それまでは、各関で、簡単な処分心得
 のようなものが定められ、これによって調査および処分が行われていたにすぎなかった。」
  と記載があります。また、当時の主な違反例について、その取扱いの概要の記載があります。

1 明治32(1899)年関税法以前の統計

(1)『大蔵省年報』 大蔵省 明29-44
  国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/799601

  『大蔵省年報 明治28年度』 p.392~399(206~209コマ)「海関税犯則」
  税関規則に違反した者について、税関で取締りした件数、罰金額等を年ごとにまとめた統計です。
  明治26~28(1893~1895)年の3年分の統計が掲載されています。
  p.396~399(208~209コマ)には、犯則種別・税関(港)別に取締り件数の内訳(内国人・外国人)  が掲載されています。

  『大蔵省年報 明治29年度』 p.357~365(187~191コマ)「海関税犯則」
  明治26~29(1893~1896)年の統計

  『大蔵省年報 明治30年度』 p.457~467(238~438コマ)「海関税犯則」
  明治26~30(1893~1897)年の統計

  『大蔵省年報 明治31年度』 p.488~498(281~285コマ)「海関税犯則」
  明治27~31(1894~1898)年の統計

(2)『主税局統計年報書 第20回』大蔵省主税局 明26-大1
  国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/799892
  p.61~62(35~36コマ)「海関税犯則者処分景況」
  明治26(1893)年の、犯則を犯した人数や処分を受けた人数、科料のまとめ数値が
  掲載されています。税関(港)別の内訳はありません。

  以後、『主税局統計年報書 第25回』(明治31(1898)年)まで毎年、同様の掲載があります。

2 明治32(1899)年関税法以降の統計
  
(1)『大蔵省年報 明治32年度』 p.449~464(244~252コマ)「海関税犯則」
  明治28~32(1895~1899)年の統計
  犯則の種目別・税関(港)別の取締り件数の内訳(内国人・外国人)が掲載されています。

   『大蔵省年報 明治34年度』 p.128~131(70~71コマ) 「関税法犯則者処分」(「国税其他滞納処分及犯則者処分」の項中)
   明治34(1901)年の統計
  関税法の条別・税関(港)別の人数が掲載されています。

  『大蔵省年報 明治35年度』~『大蔵省年報 明治43年度』は
  「国税其他滞納処分及犯則者処分」または「犯則者及滞納処分」の項の中に
  「関税法犯則者処分」の項があり、税関(港)別の人数がわかります。
  関税法の条別にはなっていないため、犯則の種類の内訳は不明です。

(2)『主税局統計年報書 第26回』
  p.143~148(82~85コマ)「関税反則者処分景況」の項
  明治31・32(1898・1899)年の数値
  犯則の種目別に犯則を犯した人数や処分を受けた人数(内国人・外国人)、科料のまとめ数値が
  掲載されています。税関(港)別の内訳はありません。

  『主税局統計年報書 第27・28回』
  p.84~87(55~56コマ)「関税反則処分」の項
  明治32・33(1899・1900)年の数値

  『主税局統計年報書 第29回』
  p.155~157(101~102コマ)「関税反則処分」の項 
  明治34・35(1901・1902)年の数値

  『主税局統計年報書 第30回』
  244コマ 「犯則」の項
  明治36(1903)年の税関(港)別の「関税犯則者表」があります。
  犯則の種目別ごとに犯則人数が掲載されています。

 以後、『主税局統計年報書 第35回』(明治41年度)まで、毎年、同様の記載があります。

  『主税局統計年報書 第36回』(明治42年度)からは「反則」の項はありますが「関税犯則者表」がないため、密輸の件数は不明です。

Webサイト最終確認日:2023年10月11日

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